「朝、なぜかぼんやりする」「スマホばっかり見て、気づけば時間ギリギリ」
そんな日が続いていたある日、ふと思った。

「もしかして、朝抹茶って、いいんじゃない？」

これまで“おやつタイム”や“気分転換”として楽しんできた抹茶だけど、
一日の始まりに一杯、点ててみたらどうなるんだろう？
そう思い立って、いつもより10分だけ早起きしてみた。

まだ静かな朝の部屋。
お湯を沸かす音、茶筅をシャカシャカする音が、やけに心に染みる。
テレビもスマホもつけず、ただ目の前の茶碗に集中する時間。

できあがった抹茶は、湯気がふわっと立っていて、目覚めたての頭にやさしく香る。
ひとくち飲むと、すっと背筋が伸びるような感じ。
カフェインが効いてる、っていうよりも、呼吸が深くなるような不思議な感覚だった。

ああ、これは……“静かなスイッチ”みたいなものかもしれない。

朝からコーヒーを飲むのも好きだったけど、
抹茶はどちらかというと、内側に向かって整えてくれるような印象がある。
「今日もがんばるぞ！」と気合いを入れるというより、
「よし、まずは深呼吸して、ゆっくり始めよう」って感じ。

朝抹茶のいいところは、ただ飲むだけじゃなくて、
「点てるプロセス」自体が“目覚まし”になってる**ところだと思う。

茶筅の音、湯気、香り、手の動き――
これらすべてが、朝の“余白”として機能してくれる。

あと個人的にうれしいのが、朝に抹茶を点てて飲んだ日は、
なんとなく「今日はちょっと丁寧に生きてる気がする」という感覚が生まれること。
ほんの10分で、1日の“質”が変わるって、ちょっと感動だった。

もちろん、毎日は無理。
寝坊した日はバタバタでスキップしちゃうこともあるし、
「朝から抹茶？無理無理！」って日もある。

でも、それでいいと思ってる。

完璧じゃなくていいから、「できるときにやる」くらいのスタンスが、私には合ってる。
それでも、週に数回、朝に抹茶を点てるだけで、なんだか心にゆとりが生まれてくるのだから不思議だ。

今では、抹茶碗と茶筅はキッチンの手の届くところに置いてある。
朝の気分で、「今日は抹茶にしようかな」と選べるように。

自宅で楽しむ抹茶は、日常に“余白”をくれる。
バタバタしがちな朝に、ほんの10分。
それだけで、気持ちのスタートラインが少しだけ変わる。